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移住した人に聞いてみた!:住んでみてわかった空き家事情。〜後編 家探しと暮らし編〜
2023.08.09
中津や耶馬溪でのリアルな暮らしや移住ストーリーをお伝えする「移住した人に聞いてみた!」。耶馬溪の人の温かさと人間味に魅了され移住を決意した石河澄江さん(以下、スミエさん)のインタビュー後編です。
前編では移住を決意するまでのお話をご紹介しました。
後編では、移住を決意した後の家探しや住み始めた頃の出来事や苦労話、についてお伺いしてみました。
空き家バンクの写真には載っていなかった景色に一目惚れ。
移住を再度決意したスミエさん。耶馬溪のイベントに遊びに来るついでに、空き家バンクで気になった物件を2軒内見したのだとか。一軒目は柱が斜めで改修作業にも費用がかかりそうだったので、却下。 あまり期待せず足を運んだ2軒目の物件。そしたら、なんと家の裏側には、空き家バンクの写真には載っていなかった、素敵な軒下空間と、美しい田んぼと山の景色が広がっていました。その景色に一目惚れしたスミエさんは、なんと、家の中を見る前に「私ここに決めました!」と即決。流石に不動産屋さんから「中もちゃんと見てから決めてください」と言われたのだとか。あの日即決・即日契約したその家に、今でも愛着を持って暮らしています。
てんてこまいの引っ越し
家の賃貸契約は6月から始まりましたが、実際に住み始めたのは7月半ばだったとのことで、最初の1ヶ月半は移住の準備で大忙しだったとか。平日は、移住後も遠隔で仕事が続けられるように仕事の関係者と交渉や準備を進めたり、週末は耶馬溪のお家の掃除・片付け・荷物の移動に追われたそうです。
スミエ 「家はしばらくの間空き家だったようで、あらゆる引き出しがネズミのフンだらけ。軒下以外をちゃんと観察していなかった事に後で気がつきました。畳も何回拭いても黒くて。湿気やカビくささもあったから、こまめに換気をしたり、バルサンを焚いたり。部屋の数も7部屋と多かったから一部屋ずつ掃除しました。引っ越し準備期間中は軒下の景色をゆっくり味わう余裕もなかったけど、作業後の温泉が新たな楽しみでした」
また、中津市では空き家バンクを通した物件では家財処分補助金が出るのですが、利用しなかったそうです。
スミエ「ネットケーブルを繋げる工事料金や不動産の利用料には移住に関する補助金を使えたのでとても助かりました。その際、補助金の申し込みから受給までの手続きが少し面倒に感じたので、家財処分については、補助金を利用せず通常のゴミ収集日に出して処分し、大きなモノだけを中津市のクリーンプラザに直接持ち込みました。私の場合は、残されていた家具や納屋の道具はそのまま使わせてもらったので処分量も少なく、かかった費用は100円以下でした。」
*補助金の内容や金額などについては年によって変わることもあります。
水道管が破裂!?住んでみてわかった空き家のこと
生活してみないとわからないことがたくさんあったとスミエさんはいいます。契約から半月ほど経った頃、まだ北九州で暮らしてたスミエさんのもとへ、水道局からなんと「耶馬溪の家の水道管から大量の水が漏れている。修理業者を呼んで、修理に立ち会ってほしい」という連絡があったそう。
スミエ「まだ空き家だった頃、冬に水道管が凍結して傷んでいたようで、週末の片付け時に私が水道を久々に使い始めたので、傷んでいたところが破裂したようで、私はまだ北九州に住んでいて漏水に気づくのが遅れたのもあって、水が何トンか大量に漏れていたようです。水道代が恐ろしかったけど、確か8000円ほど支払いました」
また、スミエさんの家は上水道と井戸水を併用していて、いざ住み始めてみると、井戸水のポンプや汲み取り式トイレの換気扇も修理が必要だったそう。
スミエ「家の中で汲み取り式トイレの臭いがするのは田舎暮らしには付き物なのだろうと勝手に思い込んで、そう気にもせずに数か月暮らしていたのですが、たまたま大家さんが気づいてくれて、ポンプも換気扇も好意で修理してくれて、家の中のトイレ臭は全くなくなりました。実際に水を使ってみないと水道管の状態もわからないし、雨季の大雨を体験してみないと雨漏りするかどうかもわからない。夏前にエアコンを取り付けようとして、寝室と客間は家の真ん中にあるのでエアコンのホースを外に出す工事が大がかりになる事が判明して代替策を考えたり、冬になって初めてどの部屋が一番寒いのかがわかって寒さ対策ができたり、薪ストーブを設置して初めて薪準備の段どりを学んだり、春夏秋冬を一周してみて初めて暮らしやすさのコツが掴めてきたように思います。」
家のお気に入りは軒下。
引っ越しの困難を超えて、少しずつ心地良いお家に。そんなスミエさんのお家のお気に入りの場所は、家の軒下。ハンモックに揺られながら、お気に入りの景色を楽しんだり、お仕事をしたり、昼寝したり、ワインと本を持ってきてただのんびり過ごすことも。雨景色や雪景色も美しくて、冬でも毛布にくるまってこの景色に癒されているとのことです。
もう1つお気に入りなのがキッチン。そこには印象的なオレンジ色のシェードの照明や、おじいちゃんからもらった棚、古道具屋さんや蚤の市で見つけたレトロで可愛い雑貨など、スミエさんらしい空間が広がっています。
スミエさんのおすすめスポット:なかま温泉
スミエさん的おすすめスポットは、「なかま温泉」。ぬるぬるの泉質や清潔で気持ちの良い空間に体が癒されるのはもちろんですが、受付のおばちゃん達や温泉の常連仲間との、のんびり交流できる時間は、一日オンラインで働くことが多いスミエさんの心を芯から温めて、緩めてくれるそう。
スミエ「「仕事終わりのなかま温泉は私の日課です。日替わり番頭のおばあちゃん達とお喋りして、おばあちゃん達が育てた朝採れ野菜を買って、お風呂で常連仲間とお喋りして、今日の頑張りを労い合ったり、体の不調を労わり合ったり、畑仕事・季節の料理・害虫対策など暮らしのコツを教わったり。風呂上りによく冷えたなかま温泉水を飲んで、駐車場への坂道を下っていく時にいつも幸せだなぁってしみじみ感じてます。地元でもないのに、何故かふるさとにいるような安心感を感じる場所のひとつです。」
移住検討中ならお試し移住がおすすめ。
移住を決めきれない人は、お試し移住もおすすめなのだとか。
スミエ「移住前は、実際に暮らしてみないとわからないような苦労・不便さ・心細さがあるんじゃないか、、と不安だったけれど、実際に暮らしてみると、買い物も耶馬溪内の直売所、旬菜館や下郷農協で十分事足りるし、定期的に開催されている集まりや助け合いの輪で、人と繋がりやすい環境が充実してるから全然心細くなかったし、むしろ頼れる人の数も楽しいイベントの数も町暮らしの時よりもはるかに増えた気がします。もしお試し移住できる機会や場所があれば、あんなに迷わず、もう1,2年は早く移住していただろうなぁ。先に移住している人たちと一緒にご飯を囲んで、『移住するか迷ってる時、私も同じ気持ちでしたよ!でも実際に移住してみたら〇〇だったから大丈夫でしたよ』『私も家探しで苦戦したけど、最後は○○がきっかけで見つかりましたよ』等の体験談を聞けるだけでも心強いかもですね。」
移住して2年。これからも耶馬溪で暮らしていきたい。
耶馬溪に移住してから2年が経って思うのは、「人と人との距離感がちょうどいい」ということなのだとか。
スミエ「気が合って頻繁に一緒に遊んだりするような密な友達的距離感とは全然違って、例え価値観やライフスタイル等が全然違っていたとしても、情報や協力が必要な時に助け合ったり、みんながより楽しく快適に暮らせるように協力し合ったり、自分たちの暮らしに直結した『必要性』を通して繋がっているので、ゆる~くて、もめるほど密でもなく、絶妙にほどよく安定した距離感なんです。ここなら何が起きても困ってる人がひとりぼっちで放っておかれるって事は絶対ない!って安心感があるし、そういう『困った時はお互い様』な関係性が豊富であることが、この時代を生きていくにあたって、私にとっては保険よりも貯金よりもずっと頼れる支えと希望です。ここで年をとっていきたい、ここでおばあちゃんになりたい、そんな場所を見つけられて、めっちゃ幸せです。」
一度諦めた耶馬溪への移住。LINEを通して伝わってきた耶馬溪の人の温かさに背中を押されて移住した耶馬溪での暮らし。着飾らないスミエさんの魅力も相まって、地域の人と繋がり、そして自分らしい田舎暮らしを楽しむ姿に、私も耶馬溪の温かさを改めて感じた時間でした。